YAMAHA DX7を忠実に再現、更にパワーアップさせたシンセサイザープラグインArturia DX7 Vをレビューします。
初代DX7が発売されてから実に三十数年ですが、かつてDX7をここまで忠実に再現したソフトシンセはありませんでした。音はもちろんGUIも秀逸、ロゴもそのまんま。
冒頭で断言しておきますが、DX7が好き、FM音源が好きなら必携です。迷わず買って損はありません。
※この記事は2017年12月17日に投稿され、新たに加筆修正したものです。
YAMAHA DX7を完璧に再現 FM音源シンセDX7 V
世界一有名なシンセのひとつ、YAMAHA DX7をエミュレートしたシンセサイザープラグイン。FM音源の代名詞のような存在です。
DX7についてここで語る必要はないと思いますが、なにせ古いシンセなので、若い人は実機知らない人が多いかもしれません。
初音ミクのカラーリングモデルということでも有名ですね。
実機はこちら。
もう手元にはないんですが、ウチにあったものです。画像自体のフィルター効果もあるんですが、実際にすこし茶色なんですよね。ちなみにクソ重いです(14.2kg)。
生方ノリタカ氏が制作に関わっている
生方氏(@ubieman)は、シンセ界の重要人物であり、音作りの大巨匠。
レディ・ガガのサウンドデザインなどでも有名で、シンセサイザーサウンドデザイナーの第一人者であります。
SynthMaster、MiniBrute、Mai Taiなどの開発にも携わっていて、シンセサイザーそのものをデザインされているんですよね。
DX7がリリースされた当初、FM音源がの音作りがあまりにも難易度が高いため、プロの間でもなかなか攻略する人がいなかったらしいです。
そこで、福田裕彦氏とのタッグで開発した、DX7のサウンドカートリッジ「生福」で業界スタジオを席巻したという、シンセ音楽史に名を刻むレジェンドなのであります。
ってなわけで、DX7を誰よりも知っている生方氏が関わっているってだけでもう神なんですわ。Arturiaさすが過ぎる…w
ARTURIAの新しいV Collectionのうち、DX7 VとClavinet Vに開発から関わりました。Clavinetはモデリングも担当。DXは実機を使っている時、ここは改良した方がいいなと思っていた事を盛り込みました。ディチューンを深くし、各オペレーターにフィードバック実装。https://t.co/xcDFpSmZQz
— Nori Ubukata (@ubieman) 2017年12月5日
私の作ったプリセットがわずか10ほど入っているが(締め切りが日本旅行中で多く作る時間がなかった)、「生福ROM」がこれ用に復刻される可能性がある。 https://t.co/Prwec6pSd0
— Nori Ubukata (@ubieman) 2017年12月5日
知ってる人はこれだけでもう垂涎モノのハズです。
初代DX7のDAC(12bit)を再現
これには本当に感動しました。ヴィンテージのシンセを再現する際にマニア間では切望だった機能です。
初代DX7のDACは「12bit」なので音が良い意味で粗く太いです。
今まではオリジナルの雰囲気を再現しようとすると、何かしらの方法で”汚す”必要があったのですが、もうその手間は要りません。
Vintageに入れるだけで、ノイズ出ます。
※Modernにするとノイズはゼロになります。
音を用意してみました。ソーサリアンの名曲です。
- Vintage DAC
- Modern DAC
- Modern DAC(Analog Chorus+Rverb)
Vintageは12bitなのでちょっと抜けが悪く、音が太いんです。俗にいう暖かみがあります。Modernは24bitなのでダイナミクスがあってスッキリしてますね。
3つ目に内蔵エフェクトを足してみましたが、とても効きが良いです。音が細くならず心地よく広がる感じ。
これはエフェクターの質もそうですが、元のFM音源ソースが良いことが重要で、更に言うと波形そのものに芯があるからこそエフェクトが乗りやすい、と考えられます。
FM8やFS1Rのエレピの音も参考までに置いておきます。全く同じ音色ではないですが、方向性というか雰囲気だけでも。
様々なFM音源実機の波形を網羅
合計25種類から波形が選択可能です。ちなみに初代DX7はサイン波のみしか使用できません。
TX81Zの波形がすべて使用可能となっていたり、OPL2、OPL3の波形もあるというマニアック仕様です。ADDITIVEは何の波形だろう…?
TX81Zは先述の通り、搭載波形が多いので4OPながら相当な変態的な音作りが可能。その個性的な音から今でも根強いファンがいるんですよね。中でもベースがたまらん。
sysEX(音色データ)の完全再現及び快適なGUI
6オペレーター、32アルゴリズムという実機と全く同じ仕様なのでsysEXの再現性も完璧です。sysEXや使用方法についてはこちらの記事を参考にしてください。
sysEXを読み込ませて聴いてみてください。実機を知っている人は笑いが止まらんはずw
使い勝手も良いのもポイント。DX7 Vは、一度読み込んだsysEXを記憶して表示してくれるんですよね。気に入らなかったら右クリックからDeleteで消せます。
大量のsysEXを使ってると「あの音どこに行ったっけなぁ・・・」という状況に陥りがちですが、そんな不毛な時間とはお別れできます。
新機能だけではなく、sysEXを多用するであろうことも想定されているところが素晴らしい。こういった快適な使用感の工夫がジワジワ効いて、結果的に使い続けるシンセになっていくのです。
sysEXは同じデータを読んでもソフトによって個体差があります。DX7 Vは、実機で読み込んだかのような、想像通りの音が鳴るのでテンション上がります。
優れたグラフィカルなインターフェイス
全体的にとにかく考えられたGUIで、操作性が良いです。視認性も高く、エンベロープなどは音の流れがアニメーションするのでわかりやすい。
中央のアルゴリズム、エンベロープ、左側のオペレーターの一覧が色分けされており、それぞれをクリックして切り替えることができます。とても直感的。
かつてここまでわかりやすいFM音源があったか!?というほど。これは追求のしがいがありますね。
プリセットの検索もサクサクです。
負荷について
音色にもよりますが、負荷は少々高めです。
下記の環境で、Studio Oneで立ち上げたところ、CPU使用率が5%くらいから、多い時で20%くらいでした。他のシンセ同様、エフェクトを多用すると重くなりますね。
Avengerより少し軽いくらいです。
Windows 64bit(Core i7 3.2G)、メモリ32GB環境での計測。
さいごに
完全なるDX7のエミュレーションがここに極まれり。FM音源好きも納得の仕上がりです。DX7再現系では現時点で最高峰。
実機にない新機能が多数搭載、使い勝手が相当工夫されているため、単純に過去のシンセをエミュレーションしただけではありません。現代の音楽シーンでも活躍できる最新のシンセサイザーとして昇華しています。
DX7の実機が大好きだという人はもちろん、FM音源を勉強してみたいという人にもオススメできるシンセサイザーですね。
ではでは。