曲をつくるためにシンセサイザーを買ったつもりが、曲は一向に増えずシンセばかりが増えていく・・・。そんな現象に陥ってる人・・・いるだろ!君だ!いや、俺だ!
シンセを買う時、デモを聴いて「こんな曲が作りたい!」「こんな音を出したかった」「俺に足りなかったシンセはコレだ」と曲作る気満々で買うんですけど、一通りピコピコ鳴らして終了。ちっとも曲増えないんですよ。
こんな記事も書きましたが・・・。
やる気だけの問題かも?とも思いますが・・・でも、周りを見てもそれっぽい人を見かける気がするぞwほら、君だ!俺と同じだ!この前シンセ買ったばかりで、曲は増えてないのにまたシンセを買おうとしてる!
と申しましても、音楽もシンセも楽しみ方は人それぞれなので、基本自分が楽しければ良いのですが「音楽やってます」と言う以上曲を書いてないと僕はイヤなんです。そんな自分に「クソ野郎」と言いたい。
じゃあどうすればよいだろう?世の中にはシンセたくさん持っててもメキメキ曲書く人もいるわけです。いったい何が違うんでしょうか?
シンセは作曲(演奏)する為のツールである
言わずもがな、シンセサイザーや楽器は曲を作る(演奏する)為にあるわけです。もちろん効果音とかも作るわけですが、基本的にはそうですよね。
音鳴らして遊ぶのも良し、コレクター癖を発揮して並べて眺めて自己満足するも良しですが、それは副産物です。
音楽は、作って、演奏してナンボです。良い曲を鳴らさないとシンセも成仏できません。これがまず大前提とします。
シンセが増えれば表現の幅が広がり、インスピレーションも得られることも事実。単純に考えると、シンセの数に比例して曲が増えそうなもんですが、どうやらそんなこともない。なぜシンセが増えていくと作る曲が増えないのでしょうか。
ちなみに、なぜ次から次にシンセが欲しくなるのか?はUGさんがブログに書かれてました。
男性に限るかもしれませんが、本能でコレクター癖があるので、そのへんも手伝ってるのかもしれませんね。
選択肢が増えると疲れる
曲作りは意思決定の連続なので、非常にパワーを使います。メロディ、コード、リズム・・・たくさんあります。その中で重要な選択のひとつに「音作り」や「音選び」があります。
シンセがたくさんあると豊富な選択肢から音色をチョイスできるという利点があります。しかし、あらかじめそれぞれにどのような音色が入っているのか、そのシンセの特性、使い方も把握しなければいけません。
勉強の手間が増えますから、その時点で曲作り以外の部分に手間をかけることになります。そしてシンセの数に比例して「選択肢」が増えていきます。
どのシンセを使うのか選び、どの音色を使うのか、エディットはするのか・・・。音のチョイスは一見たくさんの種類から選べる方が自由度が高く、メリットばかりを想像してしまいますが、選択肢が増えるということは必ずしも良い結果をもたらすとは限りません。
情報は入ってくると取捨選択を迫られる。しかし過度の選択の要求は選択そのものを放棄してしまう。2004年、コロンビア大学のシーナ・イェンガーが行った調査では、年金の401Kプランの選択で、情報が余り多すぎると人は年金プランそのものから降りてしまう傾向があった。この実験では選択の幅が2から11に増えると参加者が75%から70%に減少し、更に選択を59に増やすと参加者が61%に減ってしまった。人は情報量に圧倒されて退出を選んだのだろう。そのまま残った人はリターンの少ないプランを選択すると言う最悪の結果であった。
同様にインターネット上でショッピングをする時にも選択肢を10から50に増やすと、質の悪い商品を選択する傾向がある。商品を選択するときに人はより多くの情報が欲しくなるが、実際は選択肢の幅を狭くしてしまうとイェンガーは言う。最近は消費者の目を引こうと、有り余るほどの商品を提供しているが、年金プランのような生涯を決定するような問題では判断不能と言う重大問題になってしまう。
「選択する」と疲れるばかりか、情報過多になってしまうと人間は正しい判断ができなくなっていきます。
プリセットが何千という音源から、たった1音色を選ぶ場合、ちょっと気に入ったものがあっても「もっと良いものがあるのでは?」と思うあまり決断を鈍らせたり、そのうち耳が音に慣れてしまい、音色選び自体に失敗したり、最終的には面倒くさくなったりした経験ありませんか?
数千音色搭載のシンセも珍しくありません。選択の問題を緩和するため、ほとんどのシンセにカテゴリ分類、お気に入りチェック等、呼び出しやすくしたり似たような音色を表示してくれたり等、親切な機能がついてます。それでも目的に辿り着くまでにはいくつかの選択が必要となってきます。これについては後述します。
要は、肝心の制作(ここでは実際の作曲や編曲、打ち込む作業)の他に、多過ぎる選択肢が存在することによって、余計なパワーを使ってしまう恐れがあるということです。
極論ですが、クオリティはおいといて、チープなシンセでも曲は出来ます。豪華なシンセでも曲が出来なければ意味がありません。
シンセ増えても作る曲が増える人もいる
しかし、音源縛りなどの制約をあらかじめ設けて制作する場合は別として、幅広い音楽制作を行う為にはたくさんのシンセがあったほうが良い結果をもたらすはずです。プロがそれを証明しています。プロミュージシャンはたくさん機材持っていますよね。
なのでシンセ買っていいんです(ドヤ顔
小室哲哉(@Tetsuya_Komuro)さんや浅倉大介(@daisukeasakura)さんなんかが良い例です。ハードもソフトもめちゃくちゃたくさん持ってますよね。ドリカム中村正人さんのスタジオ
にもハード音源がズラリ。ゲーム音楽界の重鎮、細江慎治(@shinji_hosoe)さんもホラ、たくさん!
細江さんコレクションに沸くゆとりDTMer。何??ハードのサンプラーを知らないだと?!!! pic.twitter.com/zbpTOmmPx5
— Ayako Saso/佐宗綾子 (@ayako_saso) 2015, 8月 28
ではたくさんの機材に囲まれ、翻弄されてしまう私たち(失礼w)とは何が違うのでしょうか。
たとえば100曲のMP3ファイルから選ぶのは、100種類のMP3プレイヤーから選ぶことほど、気が重くない。とすれば、選択肢の種類によっては、何とか対処できそうなものがあるようだ。だがそうではない場合に、かぎりなく無限に近い選択肢の中から選ばなくてはならないとき、どうすればノイズに気を取られずに、いや気を狂わされずにいられるだろう?
一つの方法として、特定の領域での専門知識を培うことが、多すぎる選択肢に対処する手段になる。専門知識があれば、一つひとつの選択肢をより細かい部分まで認識し、別々の分割できない品目としてではなく、さまざまな特性の総体として理解することができる。たとえば同じ対象を見ても、見る人の専門知識のレベルによって、「車」、「スポーツカー」、「V12エンジン搭載フェラーリ・エンツォ」というふうに、受けとめ方が変わってくる。専門知識の助けを借りて、対象をより細かいレベルまで理解することができれば、情報処理に関する認知能力の限界を、いろいろな方法で補い、対処できる選択肢の数を大きく増やすことができる。
人はアイテム全体よりも。それがもつ属性に選好を持つようになることがある。そしてその選好をもとにして大多数の選択肢をすばやく排除し、残りの少数に注意を集中するのだ。車の例で言うと、ある人が車を買おうとしているとする。希望はドイツ車のステーションワゴン、値段は三万ドル以下、荷物収納のために後部座席が折りたたみ式になっていて、サンルーフつきならなおよい。こんなふうに好みが具体的になればなるほど、選択の作業は簡単になる。その分野に通じていて、自分が欲しいものがはっきりわかっている人は、莫大な品揃えの中からでも、適切なものを選ぶことができるのだ。
先述した、音色をカテゴリ別で選んだりする機能の使い方(手法)も、知識があるのと無いのでは大きく変わってきます。シンセに詳しい人であれば、「P5 Brass」と見ただけで「Prophet-5のブラス」と音まで何となく想像がつくわけです。そして実際に聴いてみて「似てる、似てない」の評価まで出来ます。
知識がなくとも、使用したい音色のイメージが出来ていれば方法も変わってきます。ある意味知識よりも具体的なイメージの方が重要かもしれません。
このような専門知識の効果が組み合わせれば、選択肢への対処能力は飛躍的に向上する。学習や実践を通じて、いろいろな要素を単純化、優先付け、分類、パターン化する方法を学ぶことで、混沌とした状況の中に、秩序を作り出すことができるのだ。
深い知識や経験、明確なイメージを持って、その機材を使いこなすことが出来れば、選択肢が増えてもコントロールできるということ。
そうなれば、幅広い選択肢からの恩恵を享受することができ、曲のクオリティは上がり、曲の数は減るどころか増えると予想される、ってかそう信じる。
結論
シンセが増えても技量や知識がある、またはシンセを使いこなすことが出来れば曲は増える
シンセが増えても「使いこなすことができる」「専門知識や経験がある」「自分が欲しい音が具体的にイメージ出来ている」場合は曲は減るどころか、シンセサイザーそのものにイマジネーションを掻き立てられ、曲作りもより豊かになって作る数も増えていくのではないか、という結論です。
なので、シンセばっかり買って一向に曲が増えず自己嫌悪になっている方、安心してください。勉強や使いこなしが足りないだけでシンセの数のせいではないです。
適切に使いこなすことが出来れば、選択肢が多いことによる恩恵ははかりしれません。
しかし、選択肢ばかりを増やして、極めることをしなければ確実に曲の数は減っていくでしょう。
音源がハードだった時は置き場所の問題や価格の問題で、限界があったかもしれませんが、ソフトウェアになってからは増やしやすい環境ですから、インストールばかりして選択肢だけが増えていくといったことになっている方多いのではないでしょうか。
音源縛り(決めたシンセしか使わない)とか効果あるかもです。箱庭に中で手が届く範囲でとたんにクリエイティブになったりする場合もありますので。特に慣れないうちは選択肢は少ないほうがよいです。
ってか、こんなこと書く暇があったら曲作れ!って感じですね~がんばりまーすw
ではでは。