ヴァーチャルアナログシンセサイザーの雄、Arturiaから全く新しいオリジナルシンセサイザーがリリースされました。
ヴィンテージ再現のイメージが強いArturiaからの完全新作。プロモーションの力の入り具合からしても相当の肝入りです。
長年培ってきたヴァーチャルアナログの技術と、新開発のウェーブテーブルエンジンを融合させた、新たなフラッグシップシンセサイザーとして開発されています。
巷ではSERUMと比較する声が多いようですが、その部分も考慮しつつレビューしてみたいと思います。
新世代シンセサイザー Pigments
Arturiaと言えば、ソフトウェアシンセサイザー黎明期からビンテージ機材をエミュレートした、高品質なヴァーチャルアナログシンセサイザーをリリースし続けるデベロッパーです。
近年ではアナログハードウェアシンセサイザー(アナログの実機!)まで作り上げてしまう技術力を持つに至っています。
で、その技術を結集して作られた最新のシンセサイザーがPigmentsです。
今となってはシンセのスタンダードとなっているウェーブテーブルシンセエンジンを搭載し、SERUMやAvengerに対抗していている感じがしますね。
ちなみにPigmentsの意味は「顔料」「色彩」という意味なので、カラフルでどんな音でも作ることが出来る、後述しますが色分けして視認性を向上させている、そんなイメージ。
音について
シンセエンジンのレベルは高いです。さすがシンセの老舗が作った最新のサウンド!って感じで、粒立ちが良く、上から下までしっかり太い音が出ます。
音はレトロではなくかなりモダンな感じで硬めです。今どきのサウンド。フィルターや各種モジュレーションのおかげか、ウェーブテーブル独特のヒンヤリした感じが少ないような気がします。
ウェーブテーブルシンセエンジンが強力
特筆すべきは、ウェーブテーブルに搭載されている4機のFM・フェイズモジュレーションや、ディストーション。
これが非常に強力で、Skrillexが使いそうなバッキバキのワブルベースの様な音や、FM音源やリングモジュレーターのような金属音も簡単に生成できます。
音の変化を聴きながらツマミを調整するだけで良い感じのサウンドになるので触っていて楽しい。
もちろん派手な音色だけではなく、ヴァーチャルアナログと掛け合わせることで、互いの無い部分を補完し合うような音作りが「直感的に出来る」ことが、Pigmentsの強みではないかなと感じました。
手持ちのウェーブテーブル波形も取り込んでPigmentsのエンジンで加工できます。
ヴァーチャルアナログはいたってシンプル
3OSCで、ノイズジェネレーターも搭載。波形は正弦波・鋸波・三角波・矩形波の4種類のみです。音は申し分なく素直でいい音。
かなりシンプルで、ヴァーチャルアナログのみでユニゾンなども出来ません。Pigmentsはあくまでもウェーブテーブルが主役で、ヴァーチャルアナログは補完する役割な位置づけなのだと感じました。
ただ、音がしっかり太く優等生なので基本をヴァーチャルアナログでウェーブテーブルをサブとしての音作りも全く問題ナシ。
フィルターは2機搭載されており、それぞれ8種類から選択可能です。どれも個性が際立っているのでかなり音が変わります。
直感的操作で分かりやすく音作りしやすい
シンセサイザーは音の良さはもちろん、同じくらい大切なのが分かりやすさ、操作性です。
Pigmentsという冠の通り、色を上手く使った視認性がよく、理解しやすいGUIとなっています。
音作りをしていく際もそうですが、プリセットを選択して気に入った音がどういう構造になっているのかが分かりづらい時ってありますよね。
次の画像をご覧ください。エンベロープジェネレーターがどのツマミに関連付けられているか色分けされていて一目瞭然で瞬時に分かるようになっています。
また、PigmentsはいくつかのGUIを切り替え可能です。
メインでSynth Edit(シンセエディット)、FX(エフェクト)、Seq(シーケンサー)の3種類。
ENGINE(オシレーター)が2種類、そして下段のタブが6種類(KEYBOARD、ENVELOPE、LFO、FUNCTIONS、RANDOM、COMBINATE)あります。
これだけ画面を切り替えていくと、いくら色分けでガイドしてくれても、切り替えながら音作りをしていくと迷子になりやすいのでは?と思いますよね。
が、そこは流石にしっかり考えられていて、ページが異なっても分かるようにガイドしてくれるんです。痒い所に手が届く仕様ですね。素晴らしい!
で、ENVELOPESタグを開くと
モダンでシンプル・カラフルなGUIになったのはこういう理由があったのだとわかりますね。現代的でもあり、非常に秀逸です。
負荷
負荷はまぁまぁです。発音数が多いとかなり高くはなりますので、貧弱な環境ではちょっとキツいかもですね。気になる方はまずデモりましょう。
さいごに
最新のエンジン、最新の技術を盛り込んだ後発シンセといった感じで間違いない感じ。現代にフォーカスしたハイレベルなシンセです。
操作性や視認性もあらゆるヴィンテージシンセをエミュレートしてきたArturiaならではの哲学を感じます。
操作がそれほど難しくないのでマニア向けではないのも◎。音が良く操作性が良いので楽しく音作りできます。
現在イントロプライスセール中なので、最新のウェーブテーブルシンセを楽曲に取り入れてみてください。
後発なので当然かもですが、個人的にはSERUMよりも簡単でとっつきやすいと感じています。