Audiaireは2018年ロンドンとLAスタジオで設立された新しいデベロッパーで、Sample Magic、Attack Magazine、Sounds to Sampleの創始者であるSharooz Raoofi氏が立ち上げたブランド。
20年以上のキャリアを持つSharooz氏が、満を持してAudiaire製品第一弾としてリリースしたのが「ZONE」。
音、操作性、表現力を兼ね備えた次世代シンセサイザーと呼ぶに相応しい実力を持っています。
※この記事は2018年10月3日に投稿されたものに、加筆修正したものです。
Audiaire「ZONE」
Sharooz Raoofi氏は、20年に渡って様々なシンセを収集しておりそれらを一つにまとめたいという構想を持っていました。
それをウェーブテーブルシンセサイザーとして形にしたというわけです。
拘りぬいたシンセ波形、アナログをモデリングしたフィルターが搭載されていることに加えて、最大の特徴は無限に増やせるシーケンサー。
この機能によって、直感的な操作で手早く複雑な表現が可能となっており、実にクリエイティブです。
Sharooz Raoofi氏のスタジオはこんな感じ。
2016年時点のスタジオ機材一覧も公開されています。
ハードウェアと同等の質感を持つ強力なオシレーター
拘りぬいた波形は素の状態でも太く、密度があり、ハードの質感を持っています。
ユニゾンの広がりがハードウェアを彷彿させる存在感で、強力過ぎて思わずボリュームを絞りたくなるレベル。
2オシレーターとサブオシレーターにOSC MODを加えた構成と比較的シンプルではあるものの、先にも書いたように波形が太く存在感があり、OSC MODではFMモジュレーションなどを使用可能なため、シンプルな構成でも物足りなさを感じることはありません。
モジュレーションタイプを選択してスライダーを操作するだけというあえてシンプルな構成に好感が持てます。
直感操作でいじり倒しても、破綻せずに使える音になりやすい部分も扱いやすくて良いですね。
151種類の波形を搭載
50種類以上のシンセサイザーから厳選された151種類の波形はいずれも個性があり、音作りにおいて存在感を発揮してくれます。
波形はエディットできないものの、手持ちの波形は取り込めるので事実上音作りの可能性は無限大。
ウェーブテーブルの取り込み方
①ウェーブテーブルの”USER”から”SHOW ON DISK”を選択すると、ZONEのUSERウェーブテーブルフォルダが表示されるのでそこに手持ちの波形をコピー
②”RESCAN”をクリックするとZONEに読み込まれ、選択できるようになります
ウェーブテーブル自体はショップより購入するか、ネット上からダウンロードします。
有志の方々が無料で公開されているものがあるので、色々試してみることをオススメ。
または自前のハード・ソフトシンセからウェーブテーブルを作成するのも面白いかと。
プラグインによってウェーブテーブルの音質(サウンドエンジン能力)は異なりますが、ZONEのエンジンはかなり高品質。
粒立ちが良く、波形のパワーを失わずパキッと出力してくれます。
無限に追加できるシーケンサーがすごい
ZONEの特徴のひとつであるのが自由度が高く直感操作なシーケンサーです。
例えば、フィルターを徐々に開けつつ、サブオシレーターの音量も上げながらリバーブを深くしていく・・・などが簡単に表現可能。
使い方によってはオートメーションを書く手間が省けるのも良いですね。シンセ内部で完結できます。
もちろん、複数立ち上げて更に複雑なシーケンス構築も得意とするところです。
プリセットもいくつか用意されていますが、パレットの中から選択し、ランダマイザーを使用するてだけでも面白い効果が見つかるんですよね。
何と言ってもエディットのしやすさ、視認性の良さが好印象です。
その他の機能
20種類のインサートエフェクト搭載
いずれのエフェクトも個性があり、ハッキリと効果を感じることができるので、音作りにもってこいです。
リバーブは音の輪郭をしっかり保ちつつ切れ際の美しい、シンセに合う響きを持っていると感じました。
QUALITYを3段階切り替え可能
ECO、NORMAL、EXTREMEの3段階の切り替えが可能となっています。
ECOはロービットで荒々しく、EXTREMEがハイファイな高品位といった感じ。
意外にもECOのローファイさがハードっぽくていい感じなんですよね。
めちゃくちゃ違いがあって別物と言えるほど変化するため、音色によって使い分けると面白いのではないでしょうか。
負荷について
立ち上がりは早く、もっさりした感じはないですね。極端にユニゾンを多用しなければ普通に動作してくれます。比較的軽いです。
オシレーター2つとサブオシレーターを使用、7音ユニゾンで4和音弾くとこれくらい。ここまでやると流石に半分くらい来てますが、普段はこれほどまでは使用しないでしょう。
計測環境です。
- OS・・・windows10 64bit
- CPU ・・・Intel Corei7 3.2G
- メモリ・・・32GB
- DAW・・・Cubase Pro 10.5
- Audio I/O・・・RME UCX
- バッファーサイズ・・・512samples
- サンプリングレート・・・44.1kHz
イニシャライズボタンが常設
あとは細かいことですが、イニシャライズボタンが見えるところに常設されているのも嬉しい。
プリセットを選択するウインドウの横にRESETボタンがありますので一発でデフォルト状態になります。
音作りをガンガンしたい人には嬉しいはず。
上記で説明した機能のほかに、12種類のフィルター、LFO2機、モジュレーション8機、3BANDのEQなどなどシンセサイザーに必要な機能は一通り揃っています。
そのどれもが1画面に収まっているのも直感操作を実現している要素のひとつ。
さいごに
最近はクオリティの高いシンセサイザーが多いですが、ZONEも現代を代表するシンセと言える実力を持っています。
高音質で、負荷はそこそこに納めつつクリエイティブ、そして操作は直感的に行えるのが◎。
GUIがカッコイイのもその気にさせてくれます。
使用するにはiLokアカウントが必要(インストールしたPCで使用する場合にはドングル不要)。
最新の音を奏でるシンセサイザーを是非試してみてください。