音源

AIアルゴリズムで理想のキックを実現する時代。The Him DSP Kick Ninjaレビュー

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キックを制すものは楽曲を制す。

今回紹介するKick Ninjaは、The Him DSPの2作目となるプラグインで、キックをディープに、精密に、追い込んでいくAIアルゴリズムを搭載した音源です。

The Him DSPの初作は、低域(特にサブベース)を視覚的に確認できるツール「Sub Ninja」。リリース時に無償配布されていたこともあり、開発元を知っている方も多いかもしれません。

そしてこのKick Ninjaは、楽曲制作の新たな可能性を切り開く「ゲームチェンジャー」となるでしょう。それではレビューしていくでござるよ!

 

Kick Ninja

Kick Ninjaは、キックをはじめとするドラム・ワンショット音色に特化して設計された音源です。

名前だけを聞くと「キック専用かな?」と思われるかもしれませんが、実はスネアや他の打楽器音にも幅広く対応しているんですよね。

視認性に優れたエンベロープエディター/波形ビューを搭載しており、ピッチ(音程の高さ)、アンプ(音の大きさ)、ディストーション(歪み)、その他をポインタでクリックしながら直観的に操作できます。

音を聴きつつ、目視でも確認しながら、サウンドをコントロールし詳細に作り込んでいくのがNinja Kickの大きな特徴。

サウンドエンジンは、DSPによるアナログオシレーター(OSC)1基と、サンプラー3基で構成されており多彩な音作りにも対応しています。

OSCの基本波形はサイン波ですが、サブオシレーターの波形をブレンドできる機能を搭載。

これに加えて、ピッチ、アンプ、ディストーションの調整だけで、808系をはじめとするさまざまなキック音色を作り込むことが可能です。

さらに、3つのサンプラーを搭載しているため、ワンショット系の音色であれば、ほぼ何でも作り出せると言って良いでしょう。

AIアルゴリズム「Ninja AI」によるサンプル再現

Kick Ninjaの最大の特徴である、AIアルゴリズムによるサンプル再現を試してみました。

この機能は、好きなサンプルをドラッグ&ドロップでAIセクションに読み込むと、Kick Ninjaのアナログオシレーターとサンプラーに自動的に分離し、再現してくれるというもの。

つまり、可能な限りアナログ波形で再現し、再現が難しい部分は新たにサンプルを生成してサンプラーに割り当ててくれる、という仕組みです。

抽出されたアナログオシレーター及びサンプラーサウンドは個別にエディットできるので、元の質感をそのままに音作りが行える。

もちろん、一般的なサンプラーと同じように、サンプラーセクション(S1、S2、S3)に直接サンプルを読み込んで音作りをすることも可能。

しかし、アナログ波形で再現することの利点は、より細かく精密な音作りができる点にあります。

お気に入りのサンプルをエディットする際、思い通りにいかないことってよくありますよね?

Kick NinjaのAI機能は、音程や音量のカーブを自然に再現してくれるため、エディットしてもほとんど違和感がありません。

まるで、自分自身で作り出した音源をさらに細かく調整しているかのような感覚です。

キック音色を読み込んだところ

アナログオシレーターで再現した波形

アナログを抽出し再現できなかった新たに生成されたサンプル

キックだけではなく、スネアやクラップなどのワンショットも再現できる

キック向けではあるものの、スネアやクラップ、タムドラムなどのワンショット系はバッチリエディットできます。

ただ、アナログ波形での再現はキックが向いてますね。キック以外の音色、とくに複雑な音色を読み込むと、サンプルとして分けられる比重が大きいですね。

シンプルなスネアや、タムなどは全然いけるので、基本的にAIに期待するのはキックをメインに作るマシンとして考えた方が良いでしょう。アップデートでパワーアップするかもしれませんが…。

オシレーターではなく、普通にサンプラーとして読み込めば問題なくエディットは可能。動きもサクサクなのでストレスないです。

音の質感はとても良い

サンプラーなので語るまでもないかもですが、音質はバッチリです。

読み込んだサンプルも劣化した感はないし、再現された音色もほぼ聞き分けがつきません。

アナログオシレーターも極太でブレンドして波形を変化させても細く感じたり、デジタルな嫌な風味などがありませんでした。

ここがダメだと再現プラグインとしてはお話にならないですが、文句ナシですね。

CPU負荷

音が鳴らないアイドル時はほぼ負荷はありませんが、サンプルをAIで読み込み、1音鳴らした瞬間の状態が画像のとおりです。

計測環境は以下のとおり。

  • OS ・・・Windows11 64bit
  • CPU ・・・AMD Ryzen 9 3900X [3.8GHz/12Core] 
  • メモリ・・・64GB [DDR4-3200 16GB×4]
  • DAW・・・Cubase Pro 12
  • バッファーサイズ・・・512samples
  • サンプリングレート・・・44.1kHz

※CPU負荷は、設定によって変化する可能性があるため、あくまで参考程度にとどめてください。

さいごに

開発者であるThe Him(Jeroen Kerstens氏)は、オランダの音楽プロデューサーで、電子音楽系の楽曲を得意としています。

こんなプラグインがあったらいいなという第一線で活躍するクリエイター目線からのアプローチは、作り手の「欲しい」の芯を捉えていると感じました。

まだまだ紹介しきれない機能も満載ですが、今回はこの辺で、ドロンさせていただきます。

ではでは。

The Him DSP Kick Ninjaの詳細はこちら