「よくできたMIDIコン」なんてレベルじゃない。
究極の表現を実現するキーボード、ROLI Seaboard RISE 25をレビューします。
良さそうだなと感じてはいたのですが、予想を軽く上回りました。入力機器としての完成度の高さ、ソフトウェアとの一体感、「MIDIコン」の域を超えたもはや「楽器」です。
ROLI Seaboard RISE 25
Seaboard RISE 25は、音楽表現の新たな可能性を切り開いた究極のMIDIコントローラーです。
見るからに一般的なキーボードとは異なり、音階の境目などはありません。
最初はキワモノな部類なのかなと思っていたのですが…すいません、まったくの見当違いでした。まさしく次世代のMIDIキーボードとして進化したデバイス。
今までにない表現が可能なので、ライブでの他を圧倒するパフォーマンス、制作現場でのクリエイティブな使い方の両方で活躍が期待できます。
後述しますが、3種類の音源が付属。音色数は合計で1,000種類を超えます。DAWソフトも付属しているので、PCとRISEがあればすぐにでも音楽制作がスタート可能。
5Dタッチ
RISEの最大の特徴は、5Dタッチと呼ばれるリアルタイムに音をコントロール/モジュレーションが可能なところです。
- Strike:叩く
- Press:押し込む
- Gride:左右に滑らせる(ピッチベンド・ビブラート)
- Slide:上下に滑らせる
- Lift:(指を)持ち上げる
など従来のMIDIキーボードでは出来なかった奏法、表現が可能です。
例えば指を置いた状態から押し込むのと、離した状態から叩くことでも音が変わるんですよね。
縦横無尽な演奏(入力)が可能なので、今までのMIDIコントローラーの概念を完全に覆すレベル。音程の境目がなくなることで自由度が一気に解放されます。
一般的なキーボードに搭載しているタッチレスポンスによるベロシティレイヤーや、アフタータッチによるフィルターの開閉などとは次元が違います。
更に、3つのタッチフェーダーと、XYパッドも搭載しているため、パラメーターを割り当てより一層多彩なコントロールが可能に。
実際の楽器でもこれほど自由度の高いものはないのではないでしょうか。
製品の質感
非常に堅牢な造りで、ズッシリ重く、高級感がハンパないです。満足感が異様に高い。
操作できる部分以外は硬質なプラスチックで覆われており、底板は金属です。
金属部分は、少々触った跡が目立ちやすいと感じました。画像でも残ってるのがわかりますね。もちろん拭けば取れます。
キモである、シリコン製のキーウェーブ(鍵盤部分)は、かなり高級感のある造りで、非常に手触りが良く柔らかい素材です。
傷をつけてしまわないように爪は切っておいたほうがよさそう。
センサーの感度が素晴らしく非常に敏感に反応します。触っただけでは反応はせず、ほんのわずかに力を加えるとしっかり反応してくれます。
つまり、プレイヤー次第で繊細な表現、非常に精度の高い入力が可能ということ。
一般的なMIDIキーボードに比べて高さがあまりないので、PCキーボードの奥に配置するスタイルだと弾きづらいですね。
台の上に置くか、弾くときは手前に配置するほうが良いかもです。
USBバスパワーで駆動しますが、AC電源入力も搭載。サステインペダルも装着可能。
付属ソフトについて
RISE 25の付属ソフトについて。
- Equator
- Strobe 2
- Cypher 2 Player
- Tracktion Waveform
- Bitwig 8-Track
音源3種類に加えてDAWが2種類付属しています。めちゃくちゃ豪華ですね。
Equator
MPE専用のシンセサイザーです。本格派シンセサイザーで、3オシレーターにFMも搭載。
MIDI Polyphonic Expression(MPE)とは、標準MIDIメッセージを使用して Seaboard RISEやGRANDなどのマルチディメンショナル機器との通信や操作を可能 にするためのプロトコルです。
73種類のプリセットが用意されており、ピアノ系音色やストリングス、シンセベースなど、RISEの5Dタッチを存分に堪能できます。
視認性が高く、音に連動してメーターの針が動いてくれたりするので、何がどうなっているのか把握しやすい。
全体的に音も上品で質感も良いです。即戦力で使える音色が多いのもポイント。
FXpansion Strobe 2
Strobe 2のフルバージョンが付いてきます。定価は20,000円くらいするのでかなりお得。
5Dタッチ対応音色も多数用意されています。
5Dタッチ対応のソフトウェア音源
その他、5Dタッチ対応のソフトウェアについて。今回とりあげるのは、FXpansionのCypher 2と、Audio ModelingのSWAMです。
FXPansion Cypher 2
Cypher 2は、以前ブログにも書いた通り、ハードウェアのような素晴らしい質感を持ったシンセサイザーです。
5Dタッチは、上下の動きでフィルターが開いたりとかそんな感じかな?くらいに思ってましたが、一度5Dタッチを味わってしまうともう戻れない…w
Cypher 2は、5Dタッチを使用せずとも十分素晴らしいシンセサイザーですが、5Dを使わないCypher 2は50%も実力を出し切ってなかったんだなと感じました。
プリセット名に「5D」と付いているものが対応音色です。
ツマミやスライダー、モジュレーションホイールも良いのですが、マシン全体がリボンコントローラーになったような感覚なんですよね。どこに指を滑らせてもピッチと音の変化がついてくるという。
上下の凹凸がない平たい部分を左右に「スッ」と滑らすのは絶対クセになりますw
今までのシンセサイザーの在り方を再定義してしまったような感覚すらあるかな、と。とにかく開放感がハンパなく、鍵盤の呪縛から解き放たれる…。
とにかく気持ちよく音の変化を味わえるので、今まででは得られなかったイマジネーションやアイデアが得られます。
RISE 25にはライトバージョンのCypher 2 Playerが付属します。
https://synthsonic.net/archives/fxpansion-cypher2-%e3%83%ac%e3%83%93%e3%83%a5%e3%83%bc.html
Audio Modeling SWAM Violin
Audio Modeling社のSWAM(Synchronous Waves Acoustic Modeling)シリーズは、弦楽器・管楽器・木管楽器などを、独自の物理モデリング技術でサンプルでは得ることが不可能な、圧倒的な表現力が魅力の音源。
RISEを組み合わせることにより、SWAMが実力を発揮。最大限に生楽器本来のふるまいを表現することができるんですよね。
SWAM ViolinをRISEで弾くと圧倒的なリアルさを得られます。
リアルタイムな演奏はもちろん、複雑なオートメーションを書く作業を短縮できるのが最も大きなアドバンテージではないでしょうか。
RISEならではの奏法だな、と感じたのが[Bow Gesture]の設定で[Bowing]を選択すると、上下スライスの動きで弓が動くんですよ。これには驚きましたw
細かな表現などを追求する場合に、通常の鍵盤では絶対に得ることができない発想ですよね。
慣れが必要
少々慣れが必要なのかなとも感じました。最初からは動画のようにはうまく弾けませんでした(個人差大きいと思います
設定にもよるので、それぞれの演奏しやすいように変更すると良いのかなと。
例えば、ストリングス音源で重要となる「ピッチを揺らす(ビブラート)」「音を徐々に大きくする(エクスプレッション)」ということを上下のスライドに設定する、などです。
先述のとおり、この2点だけでも大幅な時間短縮につながりますよね。打ち込みでは得られない人間臭い表現は唯一無二です。
物理モデリングのため省スペース
ダウンロードサイズは非常に小さいです。100MB以下。オケ音源は品質が高ければ高いほど大容量なものが多い傾向にあるので、ここもポイント。
ただし、その代わりCPU負荷が少々高めです。何台も同時に立ち上げるのは現実的ではありませんね。
Omnisphere 2なども対応
SpectrasonicsのOmnisphere 2やTrilianなども完全互換ではないものの、セットアップすればRISEの恩恵を受けられます。
圧倒的な音色数と音作りの深さを誇る高品質ソフトウェアなので、新たな切り口でフル活用できるのは嬉しいところ。
さいごに
もっと早く興味を持つべきでした。素晴らしいです。
今よりクリエイティブな表現をしたい、シンセサイザーの可能性を追求したい、管弦楽器のリアルな表現に挑戦したい方には絶対に試してほしい。
それぞれ想像以上の結果が得られることと、制限のない表現をすることによって、味わったことのない楽しさを体感できるデバイスです。
ではでは。
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