創作活動を行う上で、人や創作物から刺激を受けたり、インスパイアされたりすることはとても大切です。
良い曲に出逢ったり、仲間が曲作ったりすると、自分も作りたくなったり。
身の回りに創作活動している人がいると、常に高いモチベーションを保つ事が出来たり、良い影響を受ける可能性が高くなるので、環境はとても重要です。
最近はクリエイターの日常や制作現場などを覗ける機会も増えてきて、コンテンツを通じて刺激を得られるという部分でも嬉しい限りですが、その中でもトップクリエイターの対談というのは最高に得るものがあります。
天才クリエイター同士の対談は、互いが織り成す化学反応により、、見ているだけでも創作意欲がモリモリ湧いてくるというもの。
今回はそんな対談でも最高峰のものをご紹介です。
※この記事は2015年4月22日に投稿されたものに加筆修正したものです。
松本人志×宮本茂
NHK BSプレミアムで2011年に放送された、松本人志大文化祭。
お笑いのカリスマ松本人志氏と、ゲームクリエイターのカリスマ宮本茂氏の対談。
かれこれ10年前になりますが、当時かなり話題になったのでご存じの方も多いと思います。
オリジナリティとは
宮本氏みんながやるパターンに乗るとそれ以上のものを出さないと駄目ですよね。独自に考えたものっていうのは、まだ仕上げる余地がいっぱいあるんですよね。みんなわりと怖がるので安全な所に牌(パイ)を置きにいきますよね。そのときは、けっこうそこにいっぱい同じようなものが置かれているので、目立つように置くのにすごく努力がいるんですよ。
でも、独自の所に行くのは危ないですけども、まぁ、ラフに置いてもまだ空いてますから。そのほうが仕事楽しいんですよ。
松本氏言い換えれば少し卑怯なんですけどね。いや、全然卑怯じゃないんですけど。卑怯と言われれば卑怯な部分ではあるかもしれないですよね。
誰も行っていない所に行くっていうのは、「あぁ、お前らここ分からんか」ってどっかで言える部分でもあるので。
宮本氏オリジナリティってそういう事ですよね。 天性のもので何かこう、本人の中から湧き出してくるようなものって言いますけど、それは放っておいても出てくるもので。やっぱり、人に注目されるオリジナリティっていうのは、やっぱり他のものとの比較ですよね。
オリジナリティとは、「他と違う」「誰もやっていない」事であると。
先日の秋元さんの本の記事でも書いたように、意外とみんな「天性の内面から湧きだしてくるものだけ」を「オリジナリティ」と思いがちですよね。
でも、第一線で活躍するクリエイターは意外とそんな事は言ってない。
こう考えると、「オリジナリティがある事自体」はそんなに難しい事ではないのかなと…まぁそんな気にはさせてくれますね。
オリジナリティがあって、尚且つ広く受け入れられる事が難しい。
発想はどこから生まれるのか
宮本氏
分かんないんですよ。自分が発想するっていうか、ゲーム作りたくて作ってんのかも分かんないくらい。
松本さんのテレビとか見てても、誰かが提案するでしょ?「悪くはないけどなぁ」って、それじゃアカンって思ってるんですよ。でも一応「悪くは無いんやけどな」って言ってしまうやないですか。
「悪くは無いんやけどな、でもどうせそれするんなら」ってとこから企画が始まるでしょ。そしたらその企画は「でもどうせそれするんなら」が大事なポイントなんですけど、その発想はその「駄目やけどな」っていう提案をした人の発想・発案なんですよね。そういうものの積み上げでしょ。
それは自分の中であったり、会議のメンバーであったり、お客さんの意見であったりするので。だからキッカケは、っていうとやっぱりグルグル作るっていうこと前提に回ってるのがキッカケで、何もしていない時に突然「ポッ」って思い浮かばないです。
世界で尊敬されるゲームクリエイターなのに、発想はどうやって生まれるか「わからない」と。天才クリエイターも人間。
天才のイメージは、勝手にこちらが神格化してるのもあるんですが、独特の思考法であったり、ひらめきの瞬間があったりとか考えがち。
宮本氏も、松本氏も普通の人間であり、当然ですが”努力”されているということ。
普遍的なものを創る
宮本氏
古いかとか、新しいかとか、流行ってるかっていうよりは、普遍的なものというか、ずっと残るものを創りたいというか、持っている物を作りたいというか。持っていることに何か意味を感じてもらえるような物をゲームでも作りたいです。
松本氏
僕はテレビの仕事もやりながら、最近すごく、普遍的なものってどういうものなんやろう?って、すごく今難しいなって思ってるんですね。
いわば、凸(デコ)と凹(ボコ)の感じかなって思ってて。受け手が今までは、すごく凹だったんですね。
僕らが一生懸命やる事が凸で、それがうまく「カチャッ」っと合えば、僕は何かこう、普遍的なものが生まれるんじゃないかなって、ずっと思ってるんですけど。
最近、その受け手があまり凹じゃないんじゃないんじゃないかなって。
だから、あんまり僕らが凸を押し付けると、何かこう上手くかみ合わない。
特にテレビなんかでいうと、最近、視聴者の方がむしろ凸になってきてて、僕らが凸を押し付けると全然噛み合わないってことがあって。すごく今そこに、どうやったらその凸と凹がうまく合うのかなっていうのは、何か考えちゃうんですよね。ゲームにおいて、今どうなんでしょう・・・その、ゲームを欲している人たちは増えてるんでしょうか減っているんでしょうか?
宮本氏
基本的には、常に減ると思ってるんですよ。流行ったものはもう必ず減ると思ってるので。必ず減るので、増えてるか減ってるかっていう事はあんまり気にしないっていうこと。どれだけ呼んで来れるかっていう。
娯楽の会社っていうのは、やっぱりブームを何回仕掛けられるかって事が勝負ですよね。ところがゲームビジネスみたいのが出来てきて、お金を儲ける仕組みが出来ると、どんどんそこで回っていくじゃないですか。何かそのサイクルから抜けたくて。例えば、スーパーマリオが売れましたよね。そうすると、みんな褒めてくれはるんですよ、スーパーマリオ。「いやここが凄いですね、あこが凄いですね」
っていう事の言ってくれはる事の半分ぐらいは、別にスーパーマリオじゃなくても他のビデオゲームでもやってることなんですよね。という事は、スーパーマリオが出るまで、インベーダー以来、スーパーマリオが出るまでゲームを知らなかった人が世の中多いんです。それは、ゲーム作ってると、全部知っている人と付き合ってると思うので間違うんです。だから、その両方がお客さんには居る、っていうのを意識に持ちながら自分をどこをやってるか。すると、スーパーマリオの時にこの、半分のものを取ったのはすごい漁夫の利なんですけども、それは、そこに出てきたから初めて漁夫の利があるわけで。次、それを作るのには何をするかっていうと、たぶんここの流れを見てても出来ないですよね。
ゲストで宮本氏が来てるので、そういった関係なのかもしれませんが、松本氏の悩みに対して、宮本氏が少々諭しているような感じも受けました。(宮本氏が年上ということもある)
自己表現の時代ですし、メディアが多様化していて、受け手が発信者になってきていることへの戸惑いがあるのでしょう。
なぜ最近は昔ほど爆発的にヒットしたものが出ないのか
宮本氏
やっぱ人に伝わりやすい部分がなくなってきてんのかなって思ってるんですけどね。一言で人に伝わるものを作れたらええのになって、思いながらやってますけどね。ただ、分からないんですよ、それが。
そっちに考えていったらホントに当たるものが出来んのか、とは思わへんので。
もっと独自に作った方がいいのかなって。ただ、お客さんは広いよ、っていう意識だけはちゃんと持って、もっといろいろ作っていくしかないのかなって思てて。減ったっていう事を考えてもしょうがないっていう。世の中のほとんどのものは自分が欲しいなーと思ったけど買わなかったものやと思ってるんですよ。世の中の80%以上のものは俺は欲しいと思ったけど買わへんかった、買ったのは20%や10%で。「じゃあそこに70%とかの需要はあるんですか」と。買わなくて済んだり、見なくて済んでんでしょ?どうとりますか?」って話をして真剣に議論しても出てきいひん。自分自身がそうやから、って。
だから「こういう客がいっぱいいるねやー」って思ってやってれば間違いないと思うので。自分にそういって。だから自分中心でいいかなって。世界中なんですよ、マーケットは。
松本氏宮本さんは自分中心でいいかなっていっても、やっぱりちゃんと大多数を取り入れてらっしゃるところがすごいですよね。
僕はマニアックになると、どんどんマニアックにいっちゃってホントにマニアックですからね。
宮本氏の懐の深さ、言語化能力の高さが窺えます。
これはクリエイター目線というか、マーケティング目線でもある、モノ創りの真理ではないでしょうか。「80%の~」って話が深い。
感想
クリエイターは本質では皆同じ事を言っていますね。
一流の世界で経験に裏打ちされた自分の言葉で話しているのが印象的でした。
「創作とはどうあるべきなのか」技術や流行は変わっても本質は何も変わらないのだなと。
恐らく10年後に見ても、為になる対談なんじゃないかな。
二人とも関西なので、言葉とか、ノリとかが似てるからそういう部分でも馴染みやすいのかもしれませんね。
ってなわけで、スーパーマリオ35周年ってことで、界隈は盛り上がってますね。
スイッチの本体も供給が追い付きつつあるとのことで、良きですな。
スイッチ本体の定価は32,978円(税込)なので、見つけたらゲットですね。
おまけ
ピクミン3発売を記念して対談第二弾が!こちらはピクミンの宣伝中心なのであまり濃い内容ではありませんが、前回よりもお二人の距離が縮まっててほのぼのしますね。
2013年のものです。