WAVESのFM音源シンセサイザー、Flow Motion FM Synthをレビューします。
エフェクターで有名なWAVESが作ったFM音源シンセということで興味津々でしたが、じっくり触ってみたところ想像以上のデキの良さ。
FM音源だけではなく、アナログシンセの機能も持ち合わせたハイブリッドシンセで、幅広い音作りが実現できます。
個人的に推しポイントとして、FM音源=難しいという概念を打ち砕いてくれる操作性。
シンセサイザーとしての完成度が非常に高い音源なので、その魅力を存分に語ってみたいと思います。
※この記事は2019年11月28日に投稿されたものに、加筆修正したものです。
WAVES Flow Motion FM Synth
Flow Motion FM Synthは、FM音源とアナログシンセの音作りのスタイルを併せ持ったシンセサイザーです。
4オシレーターで構成され、フィルター、エンベロープジェネレーターを搭載しており、一般的な減算型アナログシンセサイザーの音作りが応用可能。
オシレーターがそのままFM音源オペレーターの役割にもなるため、1つのインターフェイスでアナログとFMの音作りを同時に行えるというわけです。
非常にインテリジェンスで洗練されたインターフェイスに脱帽。
ハイブリッドシンセらしい幅広い音作り
波形はサイン波、三角波、ノコギリ波、矩形波、ノイズから選択可能。
厳選した波形のみを用意し、選択肢を増やさないことで、ユーザーが迷わないようになっています。
出音は、明るく歯切れのいい元気なサウンドから、YAMAHA DXを思わせるクラシックなFMサウンドまで、現代的なサウンドとして再現可能です。
また、アナログシンセとして使用した際の出音も非常に太く、ブ厚くするためのレイヤーが必要ないほど。
「おまけ」としてのバーチャルアナログではありません。
FM音源とアナログシンセのレイヤー
レイヤーした質感が非常に素晴らしいです。
例えば、オシレーター1・2で鋭いFMリードを、オシレーター3・4でブ厚いノコギリ波を作成してレイヤーすると、抜けの良い特徴的なサウンドがカンタンに生成可能。
ジェントルなFMブラスと、厚みのあるアナログブラスのレイヤーも非常に良い感じです。
複数台のシンセサイザーを用意する必要がないんですよね。
あとはMOTION画面でエンベロープやLFOなどを使用して整えていきます。
レイヤーサウンドを基に、FMシンセならではのダイナミックな変化と、フィルター、LFO、深めのリバーブを組み合わせると、幻想的で美しいパッドサウンドの作成も可能です。
ちなみにネーミングは、「Frequency Modulation」と「Flow Motion」をかけた【FM】。
直感的操作でFM音源初心者にもおすすめできる
「FM音源は難しい」という方が多いですが、Flow Motionはインターフェイスにかなり工夫がされているので、触っていくうちに理解が出来るシンセではないのかと感じました。
何がどうなっているのか、オシレーター(オペレーター)がどう接続され、作用しているのかが一目瞭然です。
シンセがわからない人であっても、とりあえず触れば理解が進むのでは?そんな印象を持ちました。
初心者の方は少し時間がかかると思いますが、シンセサイザーをある程度理解している人であればすぐに使えるようになるはず。
とにかくインターフェイスが直感的なので、FM音源を使ってみたいが難しそう、という方にこそ使ってみて欲しいですね。
スナップショットシーケンサーが面白い
直感的で初心者に優しいばかりのヌルいシンセではありません。
基本的なシンセサイズの性能や、独自の機能もかなり豊富。
スナップショットシーケンサーという最大16ステップで、音を切り替えていく機能が搭載されています。要は、全く違う音を16種類連続再生できる機能。
スナップ①の音を作る⇒スナップ②に切り替えて音を作る⇒スナップ③に切り替えて音を作る・・・を繰り返します。最大16ステップまでセット可能です。
サイコロを選択した場合は、フレームがトリガーされた際に他のスナップショットの何れかがランダム再生されるという仕組み。
スナップごとの音作りは無制限で、波形を変えたりすることも可能です。かなり激しいシーケンスが組めますね。
プリセットについて
音色の傾向は、使いやすい実践向けの音が多いです。リード、ベース、パッド、ベル音色など、FM音源らしさをしっかり出しつつ、モダンな質感に昇華しているのが◎。
プリセット一覧は右上の[Load]から開きます。
音作りの視認性・操作性を追求した結果だと思いますが、プリセットブラウザが少々改善の余地があるかなと感じました。バージョンアップに期待したいところ。
プリセットは1,000種類以上用意されており、FM音源らしいバリエーションに富んだ面白い音が多く、イマジネーションが掻き立てられます。
クラシックなFM音源の音作りを直感的に
面白いなと感じたのが、プリセットの中にある[Classics]というカテゴリです。
初代DX7を思わせる音色などがズラリと揃っていますが、「MI Classic FM Operators」を選択すると、オシレーターが全てサイン波になり、4オペレーターのFMシンセを音作りするスタンバイが呼び出されるのが良いですね。
純粋なFM音源としての音作りを行いたい場合に重宝しそうです。「FM音源はサイン波だろ?」というFM音源原理主義なファンにも刺さるポイントではないでしょうか。
OSC1がキャリアでOSC2をモジュレーターにする2オペレーターのFM音源としてスタートするのが最も分かりやすいと思います。
右側のABCDのエンベロープもオペレーター間に関連付けられているのも良いですね。それぞれの色が連動していて視認性も良い。
4オペレーターのFM音源シンセをインリジェントなインターフェイスで行うのは非常に快適だと感じました。
負荷について
負荷はプリセットのよっても異なりますが、4音鳴らすと概ね20%ほどを使用します。
計測環境です。
- OS・・・windows10 64bit
- CPU ・・・Intel Corei7 3.2G
- メモリ・・・32GB
- DAW・・・Cubase Pro 10.5
- Audio I/O・・・RME UCX
- バッファーサイズ・・・512samples
- サンプリングレート・・・44.1kHz
さいごに
操作性と創造性にあふれたハイブリッドシンセシンセサイザーです。
インターフェイスが直感的でとっつきやすいのがポイント。
FM音源のハードルを下げることに一石を投じた好例と言えるでしょう。
FM音源難しい!と思っている人ほど、一度試してみることをオススメします。
ではでは。
WAVES Flow Motion FM Synth