「FG-Xって各所で評価高いけど、音割れしやすくない?」
クリアに音圧が上がることで評判のFG-X。愛用されている方も多い事でしょう。
正直な話、導入してもう数年になるにもかかわらず、つい最近までFG-Xへの認識、使い方が大きく間違っておりました。ほんとSlateさんゴメン。
というわけで、まだいる(かもしれない)であろう「FG-Xは音割れしやすい」と思っている方々を完全駆逐するために恥を晒していきたいと思います。
お詳しい方、ツッコミお待ちしてます。
SlateDigital FG-Xとは
有名なプラグインですのでご存知の方も多いと思いますが、知らない方もいるかもしれませんので、おさらいです。
国内代理店の宮地商会(M.I.D)さんのページより抜粋させていただきます。
最近の音楽では、オーバー・コンプレッションされた味気ないサウンドが一般的になってしまいました。私たちは10年以上、この”ラウドネス争い” の中にいます。音楽はパンチやダイナミクスを犠牲にし、ただひたすらやかましくなっていったのです。この流行病の最大の原因はマスタリングでレベル増大のために多用されるピーク・リミッターにあります。
ピーク・リミッターはアタックを減衰させ、パンチ、ステレオ・イメージ、ミックス・バランスにも悪影響を与えます。更に耳への負荷も増大させます。
FG-Xはこういった現代のマスタリングにおける問題点をクリアすべく2年の歳月をかけて開発されました。ミックスのクオリティに一切の影響を与えずに、サウンド・レベルをブーストすることに成功しました。
出典:宮地楽器
FG-Xは、マスタリングにおいて、ミックスバランスやダイナミクスを損なわず、簡単に音圧上げが出来るプラグインをコンセプトに開発されました。
丁寧にバランス取りを行った2mixを、そのままデカイ音にしたい・・・FG-Xを導入されるほとんどの人が動機はこれであろうと思われます。
音割れしやすいという誤解
ネット上でも「FG-X」をググれば、絶賛の声がワンサカ出てくるので、もうこれは買うしかない、音圧の悩みともおさらばや!と意気込んで導入。
マスタリング工程でのマキシサイザーってことで、マスターの最後に挿して、音圧上げ&リミッターとして使ってみました。
さぁ、市販の楽曲並みの音圧にしちゃうぜ~w意気揚々とグングンFG LEVELのGAINを上げました。
すると、確かに音は大きくなるんだけどバランスが崩れる。更にもう少し上げると音が潰れる・・・思ったような「クリアに音が大きく」とは程遠い。
なんか思てたんと違う!!
ネット上で見かけるFG-Xの評価は、「歪まず音圧がキレイに上がる」が大半。しかし、全くそうは感じられず、むしろ「歪みやすく限界が低い」「高域にクセがある」という印象を持ちました。
原因は、きっとミックスバランスが悪いせいだろう・・・と、ミックスのせいにしてました(それもあるけど
少数派ではありますが、中にはぼくと同じような感想を持たれている方もいましたけどね。ホラ同じ人いるやん!って安心してたところもあったんですよ。好みの問題なのかな?なんて。
しかしそれは大きな間違いでした。
入力レベルを突っ込み過ぎてた
「ツッコミ過ぎだバカヤロウ!」
モータースポーツでは、コーナーリングはしっかりブレーキングをして、クリップを取ってからアクセル全開が基本。オーバースピードで突っ込むよりも、ゆっくり入って素早く出た方が結果タイムは上がるんですよ。
FG-Xも同じです。突っ込み過ぎると事故起こします。原因は「レベルの突っ込み過ぎ」だったんですね(うまいこと例えた
「デジタルはレベルがキモ。入出力レベルに気をつけなければいけない」というのは、どうやら基本中の基本(プロの方に教えてもらった)
最終的にリミッターで止まってれば良いんでしょ?なんて思ってた自分が愚か過ぎてつらい。
「出力」にばかり気を取られて、入力レベルなんて全く気にしていませんでした。リミッターだからガッツリ突っ込んでもピークに赤ランプつかなければOKでしょ?という考えだったのです。なんてアウトローなんだ。
そもそも突っ込んでるレベルが大き過ぎるわけですから、更に上がる余地が無かったと。
試しにレベルを下げた2mixをFG-Xに突っ込んだところ、歪まずに音圧がめちゃ上がりました。
通常ミックスは-20から-15dBの平均RMS値であるべきでしょう。こうすることによりマスタリング段階で多くのヘッドルームを確保することが出来ます。ラウドネス・プロセッシングはマスタリング・ステージの仕事として残しておいて下さい。
ちゃんと書いてある・・・。
もちろん限界はあるものの、大きなレベルを入れた時と比較すると、全く異なる結果になりました。
ってか、マニュアルをしっかり読めということですな。
検証
それでは、入力レベルの違いでどれほどFG-Xの音圧上げに影響がでるのか、視覚的に検証してみたいと思います。 今回はFG LEVELの検証ですので、FG COMPは無視します。
Sylenth1を使用。FG-Xをインサートに直接挿してます。アナライザー用にPro-Q2。
マスタリングエフェクターなので、本来は2Mixを使用するべきですが、ここでは付加される倍音をわかりやすくするためサイン波を使用。
まず最初は、FG-Xは挿しただけの状態で、C3(ド)を鳴らしてみます。
FG-X LEVELで音圧を上げてみます
ここからが本番。FG-X LEVELを上げてみます。GAINのみを回していきます。
FG LEVEL12.6dBで倍音が発生しました。12.5dBまでは音が大きくなるだけで、倍音は発生しません。ざっくりですが、クリアに音圧を上げられるのは12.5dBまで、ということになります・・・ということにします。
まだLEVELを上げることはできますが、更に倍音が増えていくので、12.6dB以上は音質の変化と相談しながら音圧を上げていくことになります。もちろん、倍音が発生することが悪いというわけではありません。
よって、Sylenth1のVolume5(デフォ)の場合は、FG-X LEVELによる音圧上げは、GAIN12.5dBが限界。
RMSは-21.6→-9.6まで上がってます。
少なくとも視覚的には、音を変えずにかなり音圧アップしていることになりますね。
入力レベルを上げてみる
次に、音の大きい2MixをFG-Xに突っ込んだシチュエーションを想定して、Sylenth1のサイン波の音を大きくしてみます。まさに、ぼくがやっちまっていた「過剰入力状態」を再現します。
FG LEVELをまったく入れてないのに、FG-XのメーターがすでにRMS-9.6まできてます。余談ですが、Sylenth1のサイン波って20kHz付近に倍音があったんですね。
それでは、この大きい音を突っ込んでいるFG-XのFG LEVEL GAINを入れていきます。倍音発生するまでどれほど余裕があるのか?
なんと、GAINが0.6dBで倍音発生となりました。これです、まさにこの状態。
FG-Xにとって大き過ぎる音を入力した場合、クリアな音圧上げはできないに等しいのです。
わずかな差ではありますが、音量を小さくしFG-Xでめいっぱい音圧上げた最初のテストに比べてRMSが低く、倍音は多いです。つまり、大きく音を入れるよりも、小さく入れた方が変化を最小限にとどめたマキシマイズが可能なのでは?という結論に至りました。
長くなりましたが、これが言いたかったw
さいごに
いかがでしたでしょうか。
FG-Xには過度なレベル入力をしてしまうと、本来の性能を発揮できないことがようやく理解できました。
これは他のリミッターにも言えることかもしれませんが、ここではFG-Xのみとします。
入力レベルの件は、ぼくの中で大きな成長でした。これをきっかけにリミッターについて興味が湧いて、手持ちのモノを検証してたんですが、もうね、めちゃ楽しいんですよw(これを沼という
やはり自分で考えて、確かめる以外に身につく方法は無いんだなとつくづく感じた次第です。
ってか、マニュアルをしっかり読まないとこういうことになりますよという警鐘を鳴らす記事にもなったかもしれないw
今回の検証では、入力レベルがテーマだったので、FG LEVELのGAINのみの操作としましたが、本来は優秀なFG COMPを組み合わせて、LOPUNCHやDETAILを細かに調整し、トランジェントをコントロールして初めて本領発揮するプラグインです。
そのあたりはじっくり使いこなせるようにがんばっていきたいと思います。
ではでは。