使いやすく高品質なオーケストラ音源をリリースする、Musical Samplingの各種製品をご紹介します。
第一印象は「カンタンに打ち込んでも本格的になる」音源です。
オケ音源の中には、しっかり打ち込まないと説得力にかける、修練を要するものがありますが、そういった難しさを感じないんですよね。
最終的な楽曲のクオリティは、サンプルの質も大きな要素ですが、製品のコンセプトや使い勝手の良し悪しも作品のデキに大きくかかわってきます。
Musical Samplingは、短時間で打ち込んでも説得力のある表現が可能なオーケストラ音源。イメージをすぐに高いレベルでカタチにできることが他との大きなアドバンテージになっていると思います。
DAW付属の音源や、総合音源しか持っていないという方のステップアップの第一弾として、オーケストラ制作の高品質な時短アイテムとしてもオススメしたい「本格派ストリングス/ブラス音源」です。
Musical Samplingとは
Musical Samplingとは、フロリダを拠点にゲームやTVCM・トレイラー等の音楽を手掛けるコンポーザーAaron Sappが立ち上げたデベロッパーです。
比較的新しいデベロッパーではありますが、Aaron自身は2002年からプロの音楽家として活躍しているベテラン。
そんな数々の制作現場を知っている人物が制作したとなると、音質はもちろん、使い勝手も良いのではないかと想像しますが、期待通りの即戦力でリアルなライブラリに仕上がっています。
ではそのライブラリを、ひとつずつ見ていきましょう。
SOARING STRINGS
SOARING STRINGSは、レガート(持続音)に特化したストリングスで、中規模アンサンブル編成となっておりマルチな仕様を想定した音源です。
ピチカートやトレモロなどは一切入っていません。主旋律や和音などをストリングスで鳴らしたいという方は迷わずコレ。
アーティキュレーションの打ち込みなど、とにかく難しいことは考えずにリアルなストリングスを堪能できます。
モジュレーションホイールに、クレッシェンド/デクレッシェンドが割り当てられているので、手引きはもちろんオートメーションやでも、手軽にメリハリがつけられるのが良いですね。
ベロシティではなく、モジュレーションホイールでコントロールできることで極めて自然な強弱がつけられます。サスティンにもダイナミックレイヤーが割り当てられているので、例えば最初は弱く柔らかく後半は強く響かせるなどです。
めちゃくちゃ弾ける人みたいになるので気持ちよくてずっと弾いてしまいますよw
収録音色は全14音色。
音について
全体的に明るく近い音なので、主旋律や楽曲の中で目立つハーモニーなどで活躍できると思います。とてもリアルですが、扱いにくい感じはないですね。馴染みも良さそう。
柔らかな音から、アタックが早く明るい音もこなせるので、ポップスなどにもオススメではないでしょうか。
容量は6.4GBですが、NCWフォーマットにより実質4GBとなっています。
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ADVENTURE STRINGS
ADVENTURE STRINGSは、SOARING STRINGSと同じスタジオ、同じプレイヤーで演奏されているので、極めて親和性が高く、足りない奏法を補完し合う関係です。
スタッカートやピチカート、トレモロ、トリルなどが収録。
ヒューマナイズ機能を搭載しているので、アタックの強い演奏もよりリアルに表現できます。
収録音色はViolins、Violas、Cellos、Bassesにそれぞれ以下の音色が用意。
・Tremolos
・Trills KS ※Bassesのみ”Snap Pizz”
FullStringsは、AdventureとTrills KS以外の5音色となっており、合計33音色のラインナップ。
音について
歯切れの良い音も不自然な感じが全くありません。トリルなどは、鍵盤を押しっぱなしにするだけで本当にリアルに演奏してくれます。
強く弾いた際の倍音や弦が擦れるノイズなども、ところどころあえて収録してあるんですよね。こういった部分がアンサンブルの中では良いエッセンスになってくれるのではないかなと。
SOARING STRINGSとセットのような音源なので、合わせると一気に表現の幅が広がります。
容量は5.1GBですが、NCWフォーマットにより実質2.9GBとなっています。
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TRAILER STRINGS
TRAILER STRINGSは総勢60名(18 Violins, 16 Violas, 14 Cellos、12 Double basses)の奏者からなるストリングスアンサンブル音源です。
アーティキュレーションはショート系からロング系までコントロールできます。
上の画像のとおり、Adventureはリバーブやヒューマナイズ機能などを搭載。
Breakoutは、Adbentureの機能に加えてアーティキュレーションが使用可能で、鍵盤でキースイッチ、もしくはポインタを合わせてクリックで切り替えつつ、多彩な奏法をコントロールできます。
細かく打ち込んでやると、かなりのリアリティを作りこめますよね。決して複雑ではなくわかりやすいのも良いです。
そして、CellosとBassesにはFXのアーティキュレーションも収録されています。
先にも触れた通り、GUI上の文字をクリックしても切り替えられるのが良いんですよね。鍵盤数が少ない環境でも切り替えが可能です。
収録音色はViolins、Violas、Cellos、Bassesに、それぞれ上記の「Adventure」と「Breakout」が用意されています。All Stringsのみ「Breakout」と「Breakout Lite」です。
・18 Violins
・16 Violas
・14 Cellos
・12 basses
・All Strings
※All Stringsの「Breakout Lite」は130MBほど容量が小さく「SASTAINS SOFT」の収録がありません。他にリリースが短いので若干不自然な響きになります。場面に応じて使い分けると良いでしょう。ロードはさすがにLiteが早いです。CPU負荷もリリースのせいか、半分くらい。
音について
鳴らすだけで壮大な雰囲気を演出できるので、迫力のある映画音楽やトレイラーにピッタリです。
他の弦シリーズにはない迫力があり、アーティキュレーションも多彩なので、制作するジャンルによっては「TRAILER STRINGS」をチョイスするのが良いでしょう。
容量は8.7GBですが、NCWフォーマットにより実質5.3GBとなっています。
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ADVENTURE BRASS
ADVENTURE BRASSは、ロサンゼルスのスタジオ「The Bridge」にて収録された「演奏していて楽しい」をコンセプトに収録されたオールジャンルに使えるブラス音源です。
「The Bridge」は、様々なテレビ、映画、ゲームのスコアリング・プロジェクトで使用されている著名なスコアリング・ステージです。
2Trumpets、4Horns、2Trombones、1Tubaという中規模編成です。映画音楽からゲーム音楽、ポップスなどにも活躍しそうです。
収録音色は、次の通り。それぞれに「Lite」版が用意されています。
・Trumpets
・Trombones
・Horns
・Tuba
アーティキュレーションが豊富で、各楽器によって異なります。CROSSFADEとVELOCITYのカテゴリがあります。
Trumpets
Trampetsに限り「Solo Trumpet Overlay」が搭載。ユニゾンのように音を重ねて太く、豊かな響きになります。
Trombones
Horns
Tuba
音について
ドライなサウンドです。単体で鳴らすというよりも楽曲を盛り上げるような使い方が向いていると思います。馴染みは非常に良いです。
ストリングス同様、レイヤーしたときの自然さが秀逸。濁りもないので響きが美しいです。
容量は9.8GBですが、NCWフォーマットにより実質6.3GBとなっています。
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TRAILER BRASS
TRAILER BRASSは、一聴してソレとわかるトレイラー・スケールの大きい映画音楽にピッタリなブラス音源です。
大規模コンサートホールで収録されているため、ADVENTUREよりも遠い音です。よって、ジャンルはシネマティックなサウンドに傾倒しています。
もちろん、TRAILER STRINGSとの組み合わせは非常に親和性が高く、組み合わせて使うことが推奨されますね。
収録音色は、HornsとTrombonesのセクションにそれぞれAdventure、Breakout、Majesticが用意されています。The HordeにはSustainsとShortsが収録。
更にアーティキュレーションも搭載しているため、今回紹介する音源の中では最も多彩な表現が可能となっています。
・10 Horns
・10 Trombones
・3 Tubas/3 Cimbassos (The Horde)
で、極めつけはブラス音源で制作された、Sound Designの数々。
12種類のSound Designが収録されており、それぞれにアーティキュレーションを搭載。一発鳴らすだけで、臨場感、説得力が増すこと間違いなしです。劇伴やトレイラーでよく耳にするブラスサウンドばかり。
音について
こちらもドライですが、やはりスケールの大きな音なので、なんにでも使えるというわけではないと思います。
トレイラーや映画劇伴などには完全にハマること間違いなしですね。完成された音色なのでイマジネーションが掻き立てられます。
個人的にはSound Designが気に入ってます。どこかで聴いたような音、汎用性が高そうな音がたくさん入っているのが◎。即戦力になってくれると思います。
容量は3.6GBですが、NCWフォーマットにより実質2.4GBとなっています。
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全体を通して
流石は専用音色レベルの質感で、全体を通して高級感を感じることができます。
音質は程よくドライで使いやすく、リアルで気持ち良い響きを持っており、エフェクトがとてもよく馴染みます。
どの音域を鳴らしても音が細くなったりしないので、音階を駆け上がるような旋律でも自然なんですよ。このあたりはサンプルの質が問われますので、不安なく頼れる音源です。
あとは重要な要素として、ガッチリ重ねて鳴らしても違和感や音の濁りがないことも特徴のひとつ。こういった部分の拘りのひとつひとつが、さらにリアリティを高めています。
「リアルなストリングス/ブラスを、手早く打ち込めみたい!」という方にオススメな生産性の高い音源。クオリティ向上と、制作時間短縮になることがMusical Sampling音源の最大の強みだと感じました。
負荷とロードについて
サンプルは、HDDに入れていますが、大容量の割にロードもそこそこ早いのでストレスはありません。最も重たい音色でも1分はかからないです。
負荷は発音数を増やしていくとそれなりにCPUを消費するので大編成のプロジェクトを進行する場合は、高負荷に耐えうるCPUを用意するか、こまめにオーディオへ書き出す工夫が必要です。
ただ、安定感は抜群です。安心して使えます。
さいごに
いかがでしたでしょうか。
全部で5つを紹介しましたが、それぞれ得意分野が異なるので選びやすいと思います。
トレイラー系を目的としないのであれば、個人的にまずオススメはスタンダードな「SOARING STRINGS」や、「ADVENTURE BRASS」ですね。使いやすく、汎用性が高い音源です。
DAW付属音源などと比較すると遥かにクオリティはアップするので、満足感も高いと思われます。
シンプルでわかりやすく、オーケストラ音源に馴染みがない方でもすぐ使えるようになります。オケ音源入門にも良いでしょう。
音楽制作のプロが手掛けた “痒い所に手が届く” 音源です。興味が湧いた方は是非試してみてください。
ではでは。
※Kontaktのフルバージョンが必要です。
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