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本家のFM音源、ついに搭載。
Steinbergより、様々なジャンルに対応する総合音源HALionの最新バージョン、HALion 7がリリースされました。
冒頭でも触れた通り、今回の目玉となるのはFM音源の搭載。
FM音源と言えばYAMAHA(SteinbergはYAMAHAの子会社)ですから、ついに本家からソフトウェアとしてリリースされるその時が来たというわけです。往年のFM音源・YAMAHAファンはまさに大願成就。
今回、一足早くHALion 7をデモさせて頂きましたので、シンセサイザーとして、より大きくパワーアップしたHALion 7をレビューしていきたいと思います。
HALion 7
HALion 7はSteinberg社のフラグシップ音源で、様々なサウンドエンジンを搭載した総合音源です。
HALion 7のリリースに伴い、HALionシリーズに刷新が行わました。
- HALion 7
- HALion SONIC 7 Collection(プレーヤーにライブラリを付属したもの)
- HALion SONIC 7(プレーヤーのみ)※無料化
ざっくり説明すると、HALion7はサンプラー機能を有したフルバージョン、HALion SONIC 7は各種ライブラリを使用可能なエンジンのみのプレーヤーとなりました。
Steinberg公式サイトをはじめ、HALionライブラリは無料で手に入るものも多数あるので、とりあえずHALionを使ってみたいという方には朗報ではないでしょうか。
HALion 7の新機能
新しいHALionは、音源方式を選択するインターフェイスが立ち上がる。ブラックを基調としたクールなデザインで、直感的になっている。
- FM Zone(YAMAHAと共同開発):最大8つのオペレータを自由に組み合わせ、キャリアとして使用したり、フィードバックループに送ったりフィードバックループに送ることができます。アルゴリズム・ファインダー、アルゴリズム・デザイナー、SYXファイルのインポートが可能です。
- Spectral Zone:新しいスペクトルオシレーターは、新しい自社開発のタイムストレッチと再合成のアルゴリズムを搭載しています。再合成アルゴリズム。ピッチに影響を与えることなく、リアルタイムに再生速度を変更することができます。また、サンプルを全く新しいサウンドに変換することも可能です。
- FM Lab:何百もの最先端のプリセットを持つ、本格的な8オペレータFMシンセサイザー
- Tales:美しくサンプリングされたギター。ギターの弦を一つ一つ開放音としてサンプリングし、異なるピッチにチューニング。アコースティックとシンセサイザーのテクスチャをレイヤーした、非常にピュアで親密なサウンドを提供します。
- Modulation reimagined:HALionの新しいモジュレーションは、サウンドをより簡単にシェイプし、微調整し、アニメーションさせます。
- New Shaper Envelope:ユーザーエンベロープにブラシ、ペン、消しゴムツールが追加され、直感的にエンベロープを描き、カスタマイズ可能になりました。
- A fresh new look and feel:インターフェイスの更新。メディアベイと検索の再設計、ワークフローの大幅な改善。
- 最大5.1サラウンドのマルチチャンネル・ファイルに対応する高度なウェーブテーブル・シンセシスとスペクトル・フィルター
- Additional new features:10種類の新しいエフェクト、分解、X-LFO、トリガーパッドからのコード書き出し。インパルスレスポンスのインポート、オシロスコープ
- Luaでアニメーション化できるSVGリソース、カラーオプションなど、楽器をデザインするための新ツールなど
FM音源搭載
なんと言っても、最も注目すべきは本家YAMAHAと共同開発されたFM音源の搭載。
いかに実機に忠実なのか、その部分が気になるという方も多いことでしょう。
今回はその部分を中心にチェックしていきたいと思います。
DX7、FM-X、TX81Zのアルゴリズムを搭載
FM音源の伝説モデルDX7に、評価の高い4オペレーターFM音源TX81Z、そして最新最強のFM音源であるFM-Xのアルゴリズムが搭載されています。
FM-Xとは、YAMAHA最新のシンセサイザーキーボードである、MONTAGEやMODXに採用されている、8オペレータ88アルゴリズムのFM音源。
ちなみに、8オペレーターの88アルゴリズムの元はFS1Rを改良したものなので、オペレータ数やアルゴリズムは同じなんですよね。
というわけで、搭載アルゴリズム計128種類の内訳は次のとおりです。
- 4オペレータ TX81Zのアルゴリズム 8種類
- 6オペレータ DX7のアルゴリズム 32種類
- 8オペレータ FM-X(MONTAGE)のアルゴリズム 88種類
マニアも納得の全方位完璧な仕様ではないでしょうか。
参考までに手元にある、FS1RとTX81Zのアルゴリズム表と比較しましたが、当然のように一致していました。
音作り
FM音源の鬼門とも言える「音作り」においても、視認性良さとカラーリングを上手く使った直感操作で、FM音源がある程度分かった人であれば問題なく取り組めるはずです。
選択したアルゴリズムには、それぞれにフィードバックをかけるなど細かな調整も可能。
ただ、全くの初心者には少々敷居が高いのは否めませんが、上記の新機能一覧にも記載があるとおり、FM音源音色データであるシステムエクスクルーシブ(SYX)の読み込みが可能となっているため、FM音源らしい音色にはほぼ困らないのではないかと。
これで膨大な過去の資産が“本家のサウンドで”甦るというわけです。待ってた…待ってたよ!!
波形も種類が豊富。TX81ZやSY99から採用
FM音源はサイン波以外認めん!というFM音源原理主義者の方、まぁ落ち着いて聞いて下さい。
搭載波形は実機TX81ZやSY99に採用されていたYAMAHA謹製のものが中心で、かなり厳選されています。
個人的に良いなと感じたのが、ただひたすらに膨大ではないという部分です。厳選したチョイスであり、必要十分なのかなと。
ただでさえ予想がつかないFM音源の音作りは、あまりに多過ぎると迷子になってしまう可能性もありますので。
Unison搭載
当時のYAMAHAの数あるFM音源の中で一際注目されていた機能が、DX7Ⅱにしか搭載されていなかったのが”Unison”です。Unisonの為にDX7Ⅱが手放せないという方も多いのではないかと思いますが、さすがは本家、しっかり搭載してありました。
アナログに比べて、線が細い、広がりが無いなどと言われることがあるFM音源ですが、複数の音色を重ねることでアタックの早いFM音源の存在感を数倍にして聴かせることが可能に。
最大8ボイスで、DX7Ⅱよりも更に強力に、調整の幅も広くなっています。これは嬉しいですね。
3機種のオシレータの特性をエミュレート
オシレータの特性を3機種から選択可能です。
- HALion:オシレータは連続値で動作し、最高の精度をエミュレート
- FM-X:YAMAHA Montageの特性をエミュレート
- DX7:YAMAHA DX7シンセサイザーの特性をエミュレート
かなり音質に変化があるので、レガシーな音色はDX7、モダンな音色はMontageやHALionといったように、音色によって使い分けたいですね。
ってか拘りがすごい…好き。
音質について
FM音源は他社からも多数リリースされているし、本家が後発になっており、果たして質感はどうなんだろう?と思いつつ鳴らしてみましたが、そんな心配は無用でした。
間違いなく「YAMAHAのFM音源」の音がします。
変にか細い感じもなく、ユニゾンの力強さ、ダイナミクス、強弱の変化の滑らかさも絶品。
特にDX7や、ハードウェアのFM音源のサウンドを欲している人、ソフトウェアのFM音源ではどこか満足できなかった人、是非お試しください。
Absolute 6も同時リリース
HALionの刷新に伴い、Absolute 6もリリースされました。
最新のHALion 7も含まれるため、コストパフォーマンスに磨きがかかった感あります。
バンドル購入を検討する場合はこちらもチェックした方がよさそう。
参考記事:あらゆるジャンルをカバーするインストゥルメント&ライブラリー、Steinberg Absolute 5レビュー
さいごに
FM音源部だけをとっても、まだまだ書ききれないほどの機能が盛りだくさんです。
YAMAHAが監修しているだけあって、痒い所にも手が届く、完璧な仕上がりではないでしょうか。
HALionの一部ではあるものの、FM音源がついに本家によってソフトウェア化を果たした歴史的なバージョンアップなのではないかと。
FM音源部単体でも成立するレベルですね。
様々な意味でHALion 7は、まさに記念碑的なモデルです。
ではでは。
Steinberg HALion 7 クロスグレード(Rock oN)