手持ちのシンセやエフェクターに「惚れ直した」事はありますか?
最初に触った時には魅力に気付かず、数年後に「え、こんなに良かったっけ?」みたいなやつです。ぼくの場合は日常茶飯事w
知識がなかったばっかりに性能を十分に引き出せてやれなかった、使い方がわからずに投げ出していた、そのうちに存在すら忘れていた・・・そんなの悲しすぎる。
ってなわけで、ちょっと思うところがあるので考えてみました。機材全般に言えることなのですが、ここではシンセサイザーを例に語ってみたいと思います。
知識のなさはシンセの評価を誤る
あるときふと自分の足もとを見ると、そこに大きな金塊があったとします。大人なら誰でも、びっくり仰天するでしょう。慌てて家族や友人を呼んだり、スマホで写真を撮ったり、持ち上げて重さを確認したりと大興奮しますよね。なぜなら私たちは、「金塊には価値がある」と知っているからです。
ところが幼児や動物の足もとに金塊を置いても、それは単に、キレイな石にすぎません。最初は触ったり舐めたりして興味を示すでしょうが、食べられそうにもないし、おもしろいことは何も起こらないと理解した時点で、彼らは金塊を放置し、他の食べ物やおもちゃを探しに行ってしまいます。
幼児や動物には、すぐ身近にある金塊の価値に気づく能力がないのです。このように、自分のすぐそばに「価値あるもの」が存在していても、その価値を認識する力がないと、「自分の周りには何も価値あるものがない」と捉えてしまいます。
例えば、JDピアノについて、全く知識のない人はどう評価するでしょうか?単純に音の好みや、漠然とした感想はあったとしても「シンセっぽいピアノの音」という判断をするかもしれません。
JD-800ののことや、小室哲哉さんが使い倒していた事、使用された楽曲など、知識が多ければ多いほど評価(判断)が変わりますよね。
決してリアルなピアノ音色とは言えないJDピアノですが、知識によって付加価値が生まれているわけです。
未だに中古市場で高値を付けているのはそういった背景があるからですよね。
つまり、同じ音でも「知識によって価値が変化する」ということ。
往年のビンテージシンセを復刻したものや、ソフトシンセ化したものがありますが、元々の音を知らないければ、似てるかどうかすら判断できません。
知識がなければ評価の幅が狭くなってしまうのです。予備知識を持った上で、手持ちのシンセをさわってみると、再び輝きを取り戻す可能性がある。
例えばパッと聴いた感じ変な音のプリセットも、好きな映画で使用されていたと分かった瞬間に宝物を手に入れた気分になる、といった具合です。
好みの影響も大きいですが、知識によるシンセの相対評価(比較)が出来るようになると、更に面白くなっていきますよ。
機能面についても評価に影響する
また、機能面においても、知識があればシンセに正当な評価を与えることができます。
知識がなければ多機能なシンセはただ難しくわかりづらいものに過ぎません。
そもそもわからないものって、面白くないですよね。
より楽しむために知識を加えることで奥深いシンセサイザーの世界に没入でるというわけです。
目的によっても変化する
また、知識があってとしても目的によっては、必ずしも価値が大きくなるとは限りません。
音が非常に好きでも、やけに使いづらかったり、極端に重かったりすると愛着を持てなくなってしまう人もいるでしょう。
状況によって求めているものが異なるため、価値も変化する可能性があります。
なので、人の評価はその時々で変化するし、角度も異なるということ。
知識はシンセを使いこなす早道になる
浅倉大介の御大の作曲本から一部をご紹介。
まずは、シンセを触る前に、絶対にしておいてほしいことがあります。それは取扱説明書を読むということ。皆さん読んでいますか?(笑)シンセを買って早く使いたい気持ちは分かりますが、まずは説明書を読みましょう。
機材の能力を100%以上引き出すためには、やはり自分お思うままに扱えるようにならなくてはいけません。説明書にはその方法がすべて書いてありますので、ぜひ読破することをオススメします。
シンセのことは何でも知っている浅倉大介さんの言葉です。
ついつい、わからない部分だけを調べればいいやとなりがちですが、使いこなしているプロが言うと説得力が違いますよね。その説明書の読み方まで教えてくれる良書。
こちらはDX7 30thアニバーサリーブックより。
ただあるとき、坂本龍一さんと「アルゴリズムって何なんだ!?」という話をする中で何となく理解したんですよね。DX7を弾きながら、坂本さんが「あ、こりゃ『ポリモジュレーション』だ」と言い出して。「ポリモジュレーション」というのはProphet-5の機能なんですが、2つのオシレーターの片方をモジュレーターとして使い、ピッチの揺れを他方のオシレーターのフィルターに変換して複雑な倍音を作るものなんです。それで「要するにDX7はポリモジュレーションが縦にも横にも並んでいるんだろう」と言われて、目から鱗が落ちた。すっと腑に落ちましたね。それからは「アルゴリズム○番」とは考えずに、図を見ながら「こういう風に倍音が重なっているんだな」とか「それがこういう風にクロスしながらモジュレーションがかかっているんだな」という風に理解していったんです。
教授のもっとも好きなシンセは、Prophet-5。ポリモジュレーションを深く理解しており、その知識をFM音源に置き換えて理解しました。知識の応用ですね。
DX7 30th アニバーサリーブック (ヤマハムックシリーズ)
知識を深めよう
知識を深める一番の早道は、どんなシンセでも良いのでいじり倒すことです。
実際に音を作ってみて思考錯誤するのが近道。前述のとおり、もちろん説明書はしっかり読んで下さい。
知識が深まり、演奏能力が極まれば最終的には氏家さんになれます。シンセの能力を全ての面から最大限に引き出しています。
俺、ドラゴンボール7つ集めて氏家さんになるんだ・・・。
さいごに
結論:シンセに詳しくなればなるほどシンセが面白くなる
PCの中には持ち主が使い方をわかっていないだけで、本来の輝きを放っていないシンセやエフェクターがあるかもしれません。
無駄な買物や後悔をしないためにも知識は自分を守る懐刀になります。
知ってしまったばかりにその世界観というか沼にハマっていくのも一興です。
ではでは。